下宿時代にかかわるいろいろな味

お題「思い出の味」

 

はてなを始めてまだ数日の私。使い方や仕組がまだよくわかりません。

 

仕方ないので、とりあえずサイトにある「ブログチャレンジ初級」に挑むことにしました。今回は、「お題スロット」より、「思い出の味」に挑戦してみたいと思います。「下宿時代にかかわるいろいろな味」のお話になります。

 

 

私は中学卒業とともに実家を離れました。田舎の我が家から50km離れた母校までは通えないという事情からでした。

 

私の中学校からは毎年1人位がその母校に入学したのですが、みんな事情は一緒ですがら、先輩達も実家を離れていました。

 

そしてそんな私たち田舎少年の受け皿となる宿が、高校の近くにありました。

 

この地域は昭和20年に壊滅的な空襲を受けたそうですが、その宿はそこで焼け残って来たような築数十年の2階建ての長屋で風呂はなく、当時72歳のおばあちゃん1人が朝晩の食事と洗濯の面倒を見てくれました。

 

私が入寮した時は1年上の先輩、もちろん中学でも先輩だった方がいて、また冬の時期になると、あのほとんど聞き取れない方言からは、出身地も推測困難な行商の箒(ほうき)屋さんが、1、2カ月泊ってゆくのでした。

 

箒屋さんがやってくると2階は煙草の匂いがするので、毎年すぐに気がいたものです。よく1階のこたつで下宿のおばあちゃんと2人とも大きい声で何やら話しているのが聞こえたのを覚えています。

 

 

 

さて、おばあちゃんの毎度の食事は、長年やってるだけのことはありますね、バリエーションもいろいろあり、和洋中ともおいしかったと思います。それに私たちの世代のことも考えてかいつも食べきれないほどのボリュームでした。

 

起床の時間と食事の時間になると2階の自室の床が「ゴン、ゴン」と振動します。これはおばあちゃんが1階の真下のエリアから、箒の柄の先で天井をこずいているからのです。

 

そして下に降りてゆくと奥の座卓に食事の用意が出来ています。

 

先輩や私が座るとおばあちゃん、意気揚々とその部屋に入ってきて、おかずについての「キーワード」をいいます。「はつがつおだよっ!」とか「キン○マのすなはらいっ!」などなど。

 

「はつがつおって...先週もはつがつお」だったよなあ。どーいうこと?」など慣れない1年生の私は戸惑います。それに対して2年の先輩はさすがです。昨年の実績をもとに、おかずをパッと見して、今日のキーワードを言い当てるのでした。「すなはらいくるよ!!」

 

次の年、中学の後輩である新1年生が入ってきました。その頃には私も稽古の甲斐あって、大分キーワードの言い当てが出来るようになって来たのですが、冬のある日、夕食前にいつも通り現れたおばあちゃんでしたが、自分のこたつに戻ってからそのまま倒れてしまったんです。

 

幸い隣がかかりつけの病院だったので、すぐ入院し一命は取り留めたのですが、その日以降私たち下宿生3人は、おばあちゃんのご長男から預かる軍資金で数カ月間、外食三昧の日々を過ごすことになりました。

 

先輩のリーダーシップで、「藍屋」や「ステーキのどん」クラスにばかり行きました。気が小さい私は毎日「こんな高いとこで、ほんとにいいんすか?」の連続でした。

 

その後おばあちゃんは帰宅し、先輩は卒業。田舎の隣の中学校から新入生が入ってきました。また同じような日日が淡々と過ぎて行ったのですが、秋口のある日、おばあちゃんがまた倒れてしまいました。

 

再入院。それも前より重症でした。後輩の2人は、まだこれから先の在学期間も長いことから、他の宿を探して出てゆきました。その宿には入試も間近に迫りつつある私1人だけが残りました。「ごはん、どうしようかな...」

 

 

 

 

私「もしもし、おかあさん、下宿のおばあちゃんが...っていうことなんだけど、ごはんどうしたらいいかなあ?」

 

母「おまえが自分でつくるんだよ!」

 

私「毎食、ゆでたまごになっちゃうよ。それにご飯作る道具がないよ。一式買って送ってよ」

 

母「おばあちゃんちの道具を使うんだよ。炊飯器もフライパンもあるだろ!」

 

私「だって、ここんちゴキブリまみれなんだもん。使いたくないよ。10センチ近い黒いゴキブリが食器棚のなか何匹も歩いてんだよ。俺の部屋にだって一晩に5匹位出るんだから。今じゃ夜中カサカサって音がしただけで、電気つけなくてもたたけるようになっちゃったよ」

 

母「その都度食器洗ってから使えばいいだろ。今日からとりあえずやってみな!」

 

 

 

私はさっそくそのあと通学路にあるスーパーマーケットを訪れた。「これ買ってきて」というメモのない初めてのスーパーマーケット訪問。

 

「ご飯だがら、どりあえず米だよな...10キロ」

「それに、スパゲティもたべるかな...2キロ」

「野菜食べなきゃな...キャベツ2球、レタス2球、人参5本、きゅうり10本、トマト6個」

「何かかけなきゃか...サウザンドレッシング2リットル」

「はあ~、ひき割り納豆ってのはこれかあ。田舎じゃ売ってねーもんな...3個入りを5個」

「あとは...」

 

 

消費量や日持ちなどという知識はもちろんない。合計1万円くらいはした記憶がある。

 

「結構かかるんだなあ。この買い物、毎日続けられるかなあ...」

 

 

 

荷物は下宿に置いて、近所に住んでいる高校の音楽の先生(24歳・女性)のところに行った。何かあるとよく教えてもらいに行く方だ。

 

 

私「先生、下宿のおばあちゃんが...というわけんですよ。それで、ご飯炊くときに水ってどの位入れるんですか?」

 

先生「大変ねぇ。水の量はそんなに難しくないよ。お米研いだ後最後に水を入れるでしょ。そしたらね、水の中に手を広げて入れてね、お米にペタって手をつけるの。そうすると手首のところにしわが出来るでしょ。水の量はそのしわの線までにするの。やってみて!」

 

 

家に帰って男の厨房開始です。

 

「この炊飯器は5合炊き? ていうことはお米は5カップなんだろうな。」

「スパゲティは2キロ買ったよな。どの鍋なら入るかなあ」

「今日はサラダは面倒だからいいや」

「スパゲティのソースって、そういや買ってこなかったなあ。ひき割りを炒めてかけたらおいしいかもなあ。ひきわりは3個入りがひと単位だし、じゃあ6個も使えばいいか」

「ごはんはこれでスイッチオン」

「スパゲティ、このサイズの鍋でも入んないなあ...で、ゆでたらざるにあけて。水ですすぐんだよな、たしか。そばやがやってたもんな。」

「いけねー、ズパゲティソースなんもしてねーや...じゃあこれで6個入れて。ねばって広がらねーなあ...そうれにしても...納豆って...いためると...こんな臭いすんの?...あ~あ~あ~、それに焦げてきちゃったよ。あ~あ~、青い煙が...」

 

 

出来上がりました。

 

 

 

炊飯器を開けると中蓋に付くほどのご飯。芯があり端っこはつながっている、盛るお皿がないほどのスパゲティ。そしてこの世で初めて作られたであろう、ひき割りスパゲティソース(6パック分)

 

 

 

「こんなにだれが食うんだ?」

 

 

 

 

音楽の先生の指導もあって、はじめてにしては上手に炊けたと思います。しかしおかずがないので、手を付けられません。「まあいいや、ズパゲティあるしな」

 

水でよく引き締めたざるのままのスパゲティに特製ソースをかけました。

 

 

 

 

「食えるわけありません」

 

 

 

 

仕方ないので、特製ドレッシングを静かにどかし(こんな時納豆はひと塊りになってくれるので、作業しやすく助かりましたが)、サウザンドレッシングをかけました。納豆の臭いを消すためにと、500cc以上かけたと思います。

 

 

 

3口ほど食べたところで、その日は食欲が失せてしまい、ごちそうさまとなりました。

 

 

 

 

 

そして全部捨てました。

 

 

 

 

 

「おばあちゃん、早く退院しないかなあ...おれが入院しちゃいそうだよ」

 

 

 

 

 

今日はお題スロットの「思い出の味」より、「下宿にかかわるいいろいろな味」をご案内いたしました。